NHKスペシャル「“神の領域”への挑戦~ゲノムテクノロジーの光と影~」を見て
6月6日にNHKスペシャル「2030未来への分岐点“神の領域”への挑戦~ゲノムテクノロジーの光と影~」が放映されました。非常に違和感を覚えたので二言三言書いておこうかと思います。
本放送では生物の全遺伝情報(ゲノム)を編集する技術が進んだことで、食糧増産やガンの治療、新型コロナウイルスに感染するマウス、遺伝的な病気の治療、優良遺伝子の人間への活用など光の側面がある一方、個人が人工的に作り出す未知のウイルスや優良遺伝子の人間への活用が新たな貧富の差生むなどの影の面があるほか、人間にゲノム編集を受けた子供が生まれるのには倫理的な問題があるとしていました。
光の面については特に誰も反対はしないでしょう。影の面として、まず、本放送ではあまり指摘がありませんでしたが人工的に怪物が作られてしまうのではと言う漠とした不安が一般の人にあるのではないかと思います。生物誕生から40億年の歴史が有りその間に作り得なかったものは人間が作り出そうとしても物理的に無理であろうことが想像されます。仮に作り得たとしても人間の庇護の元でないと存在し得ないでしょう。なので当方はあまり心配する必要は無いものと感じています。怪物遺伝子が外に漏れ出して生態系に影響を与えると言うことも短期的、局所的に見れば起こりうるのかもしれませんが長期的、大局的に見れば地球の環境に淘汰されてしまうものと思われます。
次に、人工的に作り出された未知のウイルスですが、ここは何とも言えません。ウイルスは非常に少ないゲノム量で作成しうると思われるので、完全な人工物とはいかないまでも自然界に存在するウイルスを改変するだけで結構問題が起きそうです。
三番目に、優良遺伝子の人間への活用ですが、これも怪物遺伝子の問題とほぼ同じと考えています。短期的、局所的には優良遺伝子と思われる遺伝子を持っている人間の方が有利に働くかもしれませんが、それは、現時点で見た優良性にしかすぎず生きて行く条件が変われば不利な遺伝子となることも考えられます。以前も述べたことがあると思いますが鎌形赤血球貧血症と言う遺伝病がありますが、二本の染色体の一本に遺伝子を持つだけの時には貧血症は発症せずマラリヤに抵抗性があることが知られています。条件によって生きて行くのに有利、不利が分かれる例です。
四番目に、ゲノム編集を人間に行うことの倫理的問題ですが、チンパンジー(猿)と人間では99%のゲノム上が同じ(異論もありますが)なので猿で実験をすることは99%人間にすることと倫理的にも同じではないかと思います。それでも、猿と人間に違いがあるとするのは人間の心の問題に他なりません。逆に言うと霊長類の長たる人間の傲慢でもあります。
そんなこんなで、NHKのこの放映には色々問題があるように思えます。
最後に、新型コロナウイルスのワクチン(mRNAワクチンやベクターワクチン)が他の先進国に比べて遅れているのは遺伝的な科学技術の振興に対して倫理的な抑制がかけられた結果だと思っています。


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