「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」江崎 道朗著を読んで
本書は、コミンテルン(共産主義インターナショナル)がソ連の指導を受け世界共産革命を目指し、各国を戦争に引きずり込んだことを示しています。
なぜ、戦争に引きずり込んだかは戦争で国家を疲弊させたところで人民の蜂起(共産革命)を起こさせようとしたとあります。
日本も、この計略にまんまとはまってしまって大東亜戦争を長引かせてしまったことが記述されています。
日本の場合、明治維新以来欧米の植民地になっては成らないとの悲壮な決意から欧米の技術・思想をいち早く取り込もうとした姿勢や一次大戦後の経済的混乱や共産思想への過度の取り締まりが逆に共産主義思想へ追いやったりで、共産党の工作しやすい土壌を醸成していたことを本書では述べています。
さらに、日本ではp213に
さらにいうならば、日本の共産主義者たちは、あわせて恐るべきことを考えていた。
本章で見たような軍部の「戦時統制経済」熱を利用する形で、戦争継続をテコとして日本国内で「統制経済」の国家体制を確立し、それを共産主義社会へと転換させればいい、という考え方である。
と、いうわけで、日本では左翼全体主義者(共産主義者)が右翼全体主義者の中に偽装して入り込み日本を統制経済から左翼全体主義に進むよう操作していた現状を述べています。
なお、本書ではp38で共産主義を
なお、本書ではp38で共産主義を
共産主義とは、突きつめて単純化するならば、「生産手段を国有化して、一党独裁のもとで徹底した経済的平等をめざす考え方」だ。
と、しています。
一方、全体主義とは私の持っている辞書では、
一方、全体主義とは私の持っている辞書では、
個人に対する全体(国家・民族)の絶対的優位の主張のもとに諸集団を一元的に組み替え、諸個人を全体の目標に総動員する思想および体制
と、しています。このことからも共産主義は左翼全体主義と言えます。この本では全体主義は官僚(エリート)によって統御しやすいものとして捉えているようです。
それでは、右翼とは、p123に
それでは、右翼とは、p123に
ここでいう「右翼」とは、社会主義者や左翼たちを批判し、その言論の自由を奪うことが国を守ることだと思い込んでいる人たちのことを指す。・・・中略・・・以後「右翼全体主義者」と表記することにする。
と、しています。ここでは、弾圧のことのみをことさら表現していますが右翼全体主義も全体主義として官僚に統御しやすいものとしては同じことで、官僚や軍官僚から推進されていたことが書かれています。
当方は、中央集権的な官僚体制として律令制が思い浮かびます。これも公地公民制をとっています。結果は生産性が上がらず、三世一身法や墾田永年私財の法により実質崩壊してしまいました。官僚制の限界をこれらは示しているものと思うのです。当然、神の見えざる手(市場)に全てを任せれば良いとはさすがに思いませんが。
あと、本書では、左翼全体主義者、右翼全体主義者に対して保守自由主義者の系譜も述べられており戦前は東条英機首相が保守自由主義者を弾圧したりと混沌とした状況が述べられています。
当方、本書を読んで日本がなぜに戦争へと突き進んだのか、否、進まされたのか、随分理解が進んだように感じました。
次に、気になった部分を2ほど挙げてみたいと思います。
本書のp308を読んで、私は自分の思い込みを正された様で大変な衝撃を受けました。それは、特に大東亜戦争が祖国防衛戦争であり植民地解放戦争ではなかったことを指摘しているからです。当方は、以前に当ブログで“「大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか」加瀬 英明著(ベスト新書)を読んで”でこのことを取り上げたり、保阪 正康氏と半藤 一利氏の対談集「昭和を点検する」(講談社現代新書)p22に保阪氏が「米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書」にアジアの解放の文言が入っていれば歴史は変わったとの発言をし、半藤氏もそれに対して追認していることを紹介した時にもうなずいたものですが、本書を読んで考えが変わってしまうのでした。つまり本書では植民地解放戦争を遂行するのであればそれは戦争が長期化しそれこそ共産主義を惹起するとの主張を小柳陽太郎氏の言葉を借りて示しているのです。大東亜戦争との呼称も良くないとの考えです。
もう一つは、又引きになるのですが、p40に、
当方は、中央集権的な官僚体制として律令制が思い浮かびます。これも公地公民制をとっています。結果は生産性が上がらず、三世一身法や墾田永年私財の法により実質崩壊してしまいました。官僚制の限界をこれらは示しているものと思うのです。当然、神の見えざる手(市場)に全てを任せれば良いとはさすがに思いませんが。
あと、本書では、左翼全体主義者、右翼全体主義者に対して保守自由主義者の系譜も述べられており戦前は東条英機首相が保守自由主義者を弾圧したりと混沌とした状況が述べられています。
当方、本書を読んで日本がなぜに戦争へと突き進んだのか、否、進まされたのか、随分理解が進んだように感じました。
次に、気になった部分を2ほど挙げてみたいと思います。
本書のp308を読んで、私は自分の思い込みを正された様で大変な衝撃を受けました。それは、特に大東亜戦争が祖国防衛戦争であり植民地解放戦争ではなかったことを指摘しているからです。当方は、以前に当ブログで“「大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか」加瀬 英明著(ベスト新書)を読んで”でこのことを取り上げたり、保阪 正康氏と半藤 一利氏の対談集「昭和を点検する」(講談社現代新書)p22に保阪氏が「米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書」にアジアの解放の文言が入っていれば歴史は変わったとの発言をし、半藤氏もそれに対して追認していることを紹介した時にもうなずいたものですが、本書を読んで考えが変わってしまうのでした。つまり本書では植民地解放戦争を遂行するのであればそれは戦争が長期化しそれこそ共産主義を惹起するとの主張を小柳陽太郎氏の言葉を借りて示しているのです。大東亜戦争との呼称も良くないとの考えです。
もう一つは、又引きになるのですが、p40に、
一九九七年、フランスの国立科学研究センターの主任研究員ステファヌ・クルトワと、フランス現代史研究所の研究員ニコラ・ヴェルトは『共産主義黒書<ソ連編>』(外川継男訳、ちくま学芸文庫、二〇一六年)を上梓し、共産主義体制によってどれほどの出たのか概算を示している。
ソ連 死者二〇〇〇万
中国 死者六五〇〇万
ベトナム 死者一〇〇万
北朝鮮 死者二〇〇万
カンボジア 死者二〇〇万
東欧 死者一〇〇万
ラテンアメリカ 死者一五万
アフリカ 死者一七〇万
アフガニスタン 死者一五〇万
など、総計で一億人近くが共産主義体制によって犠牲になったと見積もっているわけだ。
今から二十年近く前の計算なので、北朝鮮や中国共産党支配下のチベットやウイグルの犠牲者を足せば、さらに多くが犠牲になったことになる。
第二次世界大戦における連合国・枢軸国および中立国の軍人・民間人の被害者数の総計は五千万~八千万人とされているので、それ以上の犠牲者を出したことになる。
しかし、そのような残虐な恐怖政治の実態は、徹底した報道規制のため、まったく知られていなかった。
と、当方は「ソ連の崩壊や北朝鮮の飢饉と戦争について考えてみる」と経済闘争と死についてブログで書いてみたのですが、階級闘争について、こう言った数字を目の当たりにすると平和であっても人は死ぬのだと慄然としてしまうのです。
さて、本書は表題ほどコミンテルンの謀略(工作)を示す資料(コミンテルンの指示で誰がどうしたといった)をあまり紹介出来なかった様ですが、コミンテルンの方針や状況証拠から、その内容を示しているのかと思います。コミンテルンはアメリカでも日本を追い詰めるよう策動していた上に日本でも工作していたわけで、これでは日本も戦争に巻き込まれざるおえなかったのかと思います。詳細に過去の日本の状況を知りたい人は本書を一読されてはと思います。
さて、本書は表題ほどコミンテルンの謀略(工作)を示す資料(コミンテルンの指示で誰がどうしたといった)をあまり紹介出来なかった様ですが、コミンテルンの方針や状況証拠から、その内容を示しているのかと思います。コミンテルンはアメリカでも日本を追い詰めるよう策動していた上に日本でも工作していたわけで、これでは日本も戦争に巻き込まれざるおえなかったのかと思います。詳細に過去の日本の状況を知りたい人は本書を一読されてはと思います。
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