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2017年3月26日 (日)

「戦争を始めるのは誰か」副題「歴史修正主義の真実」渡辺 惣樹著(文春新書)を読んで

 この本は、第二次世界大戦がどのように始まったのかを第一次世界大戦の始まりから読み解いた本です。
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 本書の帯にもあります。

○大戦の真因は、ベルサイユ体制の不条理、英国の愚策、ポーランドの稚拙な外交
○大戦はポーランドと中国の独立維持のために始まったが、どちらも守れず、共産化した
○ホロコースト以前のヒトラーはドイツ経済再建の英雄と見なされていた
○オーストリア国民はドイツ帝国への併合を熱烈に歓迎した
○大戦中の共産勢力に対する米国の支援が戦後の冷戦を招いた
○借金に追われていたチャーチルにとって、ナチス台頭は絶好のチャンスとなった
 特に、「○大戦はポーランドと中国の独立維持のために始まったが、どちらも守れず、共産化した」という見方は明らかに自由主義陣営の失敗を意味しておりこれらを進めてしまったフランクリン・デラノ・ルーズベルト(本書ではFDRと略されている)、と当時のイギリスの政治に対して批判的です。
 本書のp3「はじめに」では、

多くの知識人が、二人の悪魔(ヒトラーとスターリン)の壮絶な戦いを傍観すべきであり、そうすれば両者は必ず弱体化する。時期が来たら、アメリカが講和の仲介に入れば良いと考えていた。・・・中略・・・一九四一年夏の世論調査では、米国の傍観でドイツがイギリスとロシアの両国に勝利したとしてもそれで構わない、とする世論が六八%もあった。
と、しており米国世論は一九四一年夏時点でも不参戦であったことが述べられています。フランクリン・デラノ・ルーズベルトは表面上、世論を受けてヨーロッパの戦いへの不参加を表明していたにもかかわらず、ポーランドやシナ(中国)の国民党に働きかけてアメリカを第二次世界大戦に引きずり込んだことを本書では多岐にわたって示しています。
 例えば、日華事変(日中戦争)ついてはp220に

 ロシアは蒋介石政権に工作を仕掛け、日中戦争を煽ることにまんまと成功した。この仕掛けの本質は、対FDR政権工作であった。既に書いたように、FDRは親ロシアであり、また親中国であった。その上、国務省プロパーの外交官の意見を聞こうとしなかった。盧溝橋事件はそのようなFDRに向けて放たれた高度な外交テクニックであった。日本はベルサイユ体制を破壊し和平を乱す「悪い国」と印象付ける格好の事件に仕上げられたのである。
 一〇月五日、FDRは、日本は軍国主義、ドイツはナチズム、イタリアはファシズムという伝染病に侵された「悪い国」と決めつけ、日独伊三国は伝染病患者であると語った。伝染病に侵された患者は隔離しなくてはならないと演説した。これが世に言われる「隔離演説」である。
 以前紹介した「大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか」でもフランクリン・デラノ・ルーズベルトが日本を戦争に引きずり込んだことが述べられていましたが、その理由はヨーロッパ戦線への介入のためとしています。本書ではp228に

「隔離演説」は唐突なものだった。本来なら道路プロジェクトの完成とシカゴの発展を祝うはずの場で、なぜ日独伊三国をな詰ったのか。
 FDRは、なりもの入りで進めてきたニューディール政策の先行きを不安視していたのである。司法は既に、ニューディール政策関連法の違法性を指摘していた。
と、自身の政策の失敗を覆い隠すために行われたことが指摘されています。
 一方、ウィンストン・チャーチルも好戦的性格を持っており、第一次世界大戦後のベルサイユ体制での不誠実であるドイツが払えないような賠償金を課したり民族自決にそぐわない国境線を引いたことに無自覚であったここを示しています。それは、ドイツがチェコスロバキアのズデーテンラント併合をする際の交渉でイギリスのチェンバレン首相がミュンヘン協定で併合を認めたことに対して、議会でチェンバレンの批判をしたり、その他の批判がイギリスの戦争の火種となる愚策であるポーランドへの独立保証を進めてしまったこと示しています。p289に

 チェンバレンが気にしていたのはやはりチャーチルであった。既述のように彼は執拗にナチスドイツを攻撃していた。彼の物言いには、どこにもベルサイユ体制の不正義に対する自省の感情は見られなかったし、共産主義に対する警戒の念もない。ひたすらヒトラーは危険である、従って英国は軍備(特に航空戦力)増強が必要だと国民に訴えていた。
と、しています。
 当方も、チェンバレンがチェコスロバキアのズデーテンラント併合を認めたことがナチスドイツの世界征服の始まりと理解していましたが、本書では、p282でそれを否定しています。あくまでも、第一大戦の戦勝国であるチェコスロバキアが欲張って国境線を定めたことが発端である旨が示されています。
 また、ドイツのポーランド進行も元々第一次世界大戦後のポーランドの強欲がドイツの分断を招いてしまいそれが第二次世界大戦の火種となったことを示しています。本書では、ヒトラーが平和裏に交渉でことを進めようとしていたことがp284にあります。
 最後に、本書から気になった部分を示したいと思います。それは、第一次世界大戦でドイツはイギリスから港湾封鎖を受け、餓死者が出ていたそうです。それも、講和が有利に進められよう休戦以後も続けられたくだりがp50にあります。

 ところがドイツの期待は裏切られた。休戦がなってもイギリス海軍はドイツ港湾の封鎖を解かなかった。そのためドイツ国民は休戦後も飢え続けた。封鎖の狙いは、厳しい講和条件をドイツに飲ませるためであった。そのためにはドイツを徹底的に苦しめておく必要があった。イギリスの外交政策は日本人が考えるような紳士のそれでは決してない。国益最大化を狙う冷徹なものであった。港湾封鎖は一九一九年三月には若干緩和されたものの七月一二日まで続いた。休戦から封鎖が解かれるまでにおよそ二五万人が餓死した。
果たして、近代戦ではここまで過酷なことは無いかもしれませんが、相手が中共やロシアとなるといざという時にやはり食料は国内生産できる体制を整えた方が良いのではと感じるところです。食料生産資材も出来るだけ備蓄や代替物に速やかに移行できる体制を整えておくことが望ましいものと思います。
 本書は、第一次世界大戦から第二次世界大戦の始まりまでに関して今までとは違った見方を示してくれますので一度手にとってみてはと思います。

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