「超マクロ展望世界経済の真実」水野和夫 萱野稔人 共著(集英社新書)を読んで
この本は、経済と語っていますがそれだけにはとどまっておらず、国のあり方についても書かれています。
歴史的にイタリア、オランダ、イギリス、アメリカと経済的覇権の転換につれて軍事的覇権の転換が進んだことを示しています。イタリアとオランダ間では中世の封建社会と資本主義の転換点であると同時に、イタリアとオランダ、イギリスの間は陸上からの支配と海からの支配の転換点で、イギリスとアメリカの間はフォード式生産方式への転換点であると同時に、海からの支配と空からの支配の転換点であったことを示しています。これらの転換点の中で覇権を持った国の利潤率が低くなるとその国の金融化が興りやがて金融化の没落後に軍事や経済的覇権が移って行くことが言われています。また、今の時代は経済的覇権が空間的な覇権(宇宙であり軍事的な覇権)から分離する新しい時代に入ったとしています。
日本の軍事については本書には書かれていませんが、アメリカの軍事的覇権は今後しばらくの間維持するであろうことは書かれています。EUも中国もしばらくはアメリカに追いつかないのではとの見解です。
私は既に紹介した他の本「尖閣戦争」や「日本人のための戦略的思考入門」からは中国の軍事覇権はアメリカより弱いものであっても日本にとっては厳しい状態を示すものであり看過出来ないものと思われるのです。やはり、軍事的にも社会、経済的にもより防衛的な対策を計るべきではないかと思うのです。
さて、経済的覇権として、アメリカは1974年頃から金融化が興りITバブル、住宅バブルを経てリーマンショックで曲がり角を迎えたと見られています。
日本は土地や株でバブルが起きたわけですがそれはアメリカより早く、資本蓄積がアメリカよりも大きかったためにバブルが早く起きたことと米ソ冷戦の資金のために利用されたのではないかと見られています。
今後の日本は、バブルを早く迎え低成長の社会についても先進国の中で一足早く迎えておりモデルがない中で社会制度の変更を実施しなくてはならず、とりわけ財政問題(国等の借金)は社会保障費のあり方を含め早く行う必要があるとしています。とくに、低成長時代(交易条件の変化や需要の飽和)を迎えたのであるから金融緩和によるインフレ政策や財政出動は効果が薄いと見ているようです。
私の考え方としては、財政問題は積み残しになり財政破綻によるインフレを心配してしまいます。結局のところ社会保障問題や徴税などの財政問題は日本人の心のありようにかかってくるのだと思いますが、今の状態では莫大な借金を返せるような状態ではない様に思えます。私の様な小者が出来るとすればそれは財産の逃避ぐらいしか思いつきません。グローバル化が進んだ日本でどうしてこの財産の逃避が行われないのかは不思議としか言いようがありません。ヨーロッパの金融不安では日本の機関投資家は日本国債へ乗せ換えを行っているようですが私にはその意図が全く分からないのです。この本を読んで、新興国へ財産の移転を進めるべきとの思考を得たものですが、皆様はどうお考えでしょうか。また、私は個人的には新興国の中でも日本と対立する中国は避けてインドへの投資を進めるべきとの考えに至っております。皆様は私の意見だけではなく色々考えて投資は自己責任で行いましょう。
さて、この本は、そのほかにも基軸通貨の考え方とか、それにも関連してイラク戦争がなぜ起こされたのかとか、世界資本主義であるとか、環境規制を初めとした規制社会が付加価値を産むとか、色々なことが書かれていますので一読の価値があると思います。
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